四条大橋下

掲載地図の作成方法 その2

「『京都の災害をめぐる』余話」は、
企画制作の裏話や、本には書ききれなかった補足事項など、本書をより楽しんでいただくための文章を著者に寄稿していただく企画です。

 

私たちの暮らす地表面には様々なモノが存在しますが、地図を作成するときには何が主題であるかを明確にし、掲載するものを取捨選択しなければなりません。本書の地図は災害が主題であるため、地形や河川といった自然的要素は必須です。そのほか、案内図としての役割もあるため、道路や鉄道、ランドマークとなる施設なども掲載しました。水域や水涯線は国土地理院の基盤地図情報からダウンロードしました。建物の外周線のデータもここからダウンロードできます。また区役所や学校などの施設の位置は、国交省の国土数値情報ダウンロードサービスから、それぞれ適当なデータをダウンロードして利用しました。こうしたデータが整備され無料でダウンロードして利用できるのですから驚きです(利用目的によって承認や出典の明記が必要な場合があります)。

最も試行錯誤したのが道路のデータでした。基盤地図情報には道路縁のデータはありますが、道路の中心線のデータがありませんでした。国土地理院がベクトルタイル提供実験事業で道路中心線のデータを公開中だったのでそれを利用しようとも考えましたが、同院が販売している数値地図2500に道路中心線のデータが収録されていたため、こちらを購入して利用しました。道路の広さで区別して線種を3段階ほどに分けましたが、縮尺によって幅を変えるなど調整に苦労しました。また当初は建物外周線のデータを入れていませんでしたが、焼け野原のように見えるとの指摘をうけて追加し、やっと京都の街並みらしい地図ができ上りました。こうして作成した基図に掲載地点を加えてSVG形式で出力し、ドロー系ソフト(illustratorなど)で細かい追加修正をおこないました。トンネル部分の処理や道の色分け、通りや河川の名称の追加などは手作業でひとつひとつ編集頂きました。

現在、本書に掲載したこれらの地図を、画像やPDFデータとして公開(CC BY 4.0)しています(こちら)。必要に応じてダウンロードして頂き、拡大印刷してまち歩きに利用してもらうことができます。さらに掲載地点についてはGoogle マイマップでも公開しているので(こちら)、スマホで読み込んで自分の位置を確認しながら歩くことが可能です(ただし歩きスマホは事故の元ですから注意してください)。さらに本書の各種情報を盛り込んだ本格的なweb地図をこれから構築予定で、紙幅の関係で本書には収録できなかった地点や写真なども掲載できればと考えています。

本書は読むだけでも各地点の災害の記憶を知ることができますが、現地を訪ねてもらい何かを感じることで、はじめて完成するものと思っています。地図をもとに実際に現場を訪れて、周囲の地形や街並みを観察してください。石碑に触れ文字を読んでみてください。関連する地点をめぐっていると、それぞれの関係性に気付くかもしれません。もっと詳しく知りたい人は元になった文献や史資料、古地図にあたってみてください。本書には書かれていない発見がきっとあるはずです。

(写真:2019年5月プレイベントのまち歩きの様子。現四条大橋の下に遺る先代四条大橋の遺構)

『京都の災害をめぐる』特設ページ