企画制作の裏話や、本には書ききれなかった補足事項など、本書をより楽しんでいただくための文章を著者に寄稿していただく企画です。
京都の紅葉シーズンも終盤。京都の各所で紅葉を楽しんでおられる方が大勢いらっしゃいます。電車やバスも路線によってはいつも以上の混みようですね。私自身のお気に入りは近所のお寺のもみじや銀杏の木です。紅葉とならんで春の桜の時期もまた、お花見や桜の咲く風景を楽しむ人であふれかえります。
その「花」や「紅葉」がタイトルに入った『花紅葉都咄』(はなもみじみやこばなし)という本(古典籍)があります。観光案内書かと思いきや、さにあらず。天明8年(1788)に発生した京都での大火のようすを書いた本です。『京都の災害をめぐる』では, 81番「霰天神山」、84番「永養寺」、89番「本圀寺跡」、91番「興正寺」で引用しています。いずれも、天明京都大火について話題にした項目です。また、カバーとカバーをめくった表紙のデザインにも使用しています。
『花紅葉都咄』の冒頭には「火の用心いたすべき」とあり、火災に関する啓蒙書といったところです。「燃えるような」と表現されることもある「紅葉」のようすや、灰のように散っていく「花」のようすをタイトルに盛り込んだということなのでしょうか? あるいは、観光ガイド風のタイトルで気を引き、火災への備えを広く知らしめようとしたのでしょうか? そうだとすれば、私たちが防災に必要な知識を広める上で大いに参考になる手法なのではないかと思いました。こんなに洒落たタイトルをつけるのはなかなか難しいですけれども。
なお、『花紅葉都咄』は、京都府立京都学・歴彩館の京の記憶アーカイブ(http://www.archives.kyoto.jp/websearchpe/detail/225148)、国文学研究資料館の新日本古典籍総合データベース(http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/200021949/viewer/1)、早稲田大学の古典籍総合データベース(https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/wo01/wo01_02950/index.html)、国立公文書館デジタルアーカイブ(https://www.digital.archives.go.jp/das/image/F1000000000000049894)などでデジタル資料として閲覧できます。